吹替版メインキャスト ロングインタビュー
「逆奏のカノン」日本語吹替版 イェノ役:犬丸義貴さん・ソフィー役:岩元絵美さん・デイヴィッド役:北口聖さん

写真右から 北口聖さん(俳協所属)、犬丸義貴さん(アルディ所属)、岩元絵美さん(E-sprinG所属)
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- 前編 [混迷の戦前を描くロマンス映画への挑戦]
- 後編 [重なる情熱、物語と役作りの境界に向けて]
インタビュー前編 混迷の戦前を描くロマンス映画への挑戦
── この作品は第2次世界大戦が近づくヨーロッパでの、ヴァイオリンと音楽を愛する純朴な青年と美しいユダヤ人女性ピアニストの悲恋の物語です。そして、二人の青年の出自にまつわる友情物語でもあります。
最初にキャスティングされた時の気持ちを聞かせてください。
犬丸:キャスティングしていただいた時は、もう純粋にとても嬉しかったのですが、この物語の主人公であるイェノの人生をベースに話が進んでいくので、自分がブレずにいないといけないっていう緊張感で、とにかく身が引き締まる思いでした。
岩元:私も、喜びと同時に、しっかりソフィーという人間を表現しなければというプレッシャーをすごく感じまして…キャスティングをいただいた時点では、彼女に対する解像度がまだまだ低い状態でしたので、どこまで深彫りできるかが勝負だと気を引き締めました。
北口:デイヴィッドは、オーディションでやらせていただいた時からずっとやりたかった役だったので、決まった時はもうとにかく嬉しくて嬉しくて。自宅までの帰り道、周囲に人がいないのを確認してから「よっしゃ!」って何度も叫んでしまいました(笑)。
同時に彼の繊細さや生い立ちなどをどうトレースしてどう表現していくか、頭を悩ませながらひたすら向き合う日々が始まりました。



── 3人のキャラクターは才能ある音楽家として物語の主軸になっていきますが、吹替を演じる上でどのような役作りを心がけましたか?
犬丸:イェノは非凡な音楽家でありつつ、本当に純真無垢な青年で、友達とか家族とか、好きな人のことを本当にまっすぐ愛せる人です。演じていると彼の情熱が乗り移ってくるかのように心が揺さぶられるので、そこがイェノというキャラクターの肝になる部分だと思って、できるだけオリジナルに忠実に表現していけるように頑張りました。
岩元:ソフィーはピアニストなので…実は私も子供の頃にピアノを習っていた経験があって、家に眠っていたキーボードを引っ張り出して、基礎からコツコツ練習をしました。
ただ、本物のピアノとは鍵盤の重さが全く違うので、それを含めてのイメトレを結構しました。
あと、さっきデイヴィッドの繊細さという話がありましたが、ソフィーも繊細な女性で…どこまでそれを表現できるかに加えて、ユダヤ人音楽家として社会的圧力を受ける時代背景もあるので、彼女の望む生き方と社会状況のずれをしっかりとらえて演じようと思いました。
北口:デイヴィッドは裕福な家柄に生まれ、恵まれた環境で育った青年で、ある意味イェノとは対極的な存在。けれども、さっきも触れたとおりとても多感で繊細な青年です。
言葉の一つ一つに滲む彼自身の生き方だったり、コンプレックスだったり…そこを汲み取りながら表現していくために、彼の表情や息遣いに注目して、映像を何度も繰り返し見て、それらを拾えるように努めました。
それと今回、スタッフの方のご厚意でヴァイオリンを貸していただいたんです。
触れたことがない楽器だったので、演奏シーンについては息遣いなどの表現がおぼつかなかったんですが、実際に楽器を構えたり音を出したりしてみることで、身体の動きが体感できて、息遣いとかも芝居に活かせたかなと…すごく貴重な経験をさせていただいて、本当にありがたかったです。
犬丸:自分もです。先に僕がお借りしていて。
北口:それを見て「あ、いいなぁ」って(笑)
犬丸:まず楽器の重みを感じることから始まって…
北口:実際に音を出すのが本当に難しくて。
犬丸:すごく大変でしたが、この経験が芝居に役立ったのは間違いないかと思います。


── この作品は音楽が重要な位置を占めています。第2次世界大戦下の悲劇の物語に、イタリア映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネの奏でる旋律が非常に美しく彩りを加えていました。作品世界とテーマをどのように受け止めましたか?
犬丸:イェノ自身が弾く場面も多いのですが、圧巻の素晴らしい音楽ばかりで印象的でした。
物語やキャラクターの心情に深みが加わって、親子愛や切ない恋、友情に溢れる学園生活など、物語の煌めきみたいなものに最初から最後までどっぷり浸れます。
岩元:本当に素敵な曲ばかりでずっと聴いていたくなります。華やかで力強くて、そして繊細で…でも、そんな素敵な音楽の世界の一方で、ユダヤ人への迫害という残酷な世界があって。
その真逆の要素を持った二つの世界観が混沌として、そして、戦後でもまたプラハの市民がソ連軍に抑圧される場面があり、非常に深みのある作品になっていると思いました。
北口:僕の個人的な考えではありますが、名作には名曲ありだと…どんな作品も、その世界観を満たす音楽の力で、彩りがより鮮やかさを増すと思っています。
この作品もそのとおり、登場人物たちの心情や物語の展開が、本当に素晴らしいヴァイオリンの旋律に彩られていると感じました。
そして原題(“CANONE INVERSO Maling Love”)にもあるように、愛がやっぱりここ一番のテーマなんじゃないかと思います。
岩元:色んな要素が絡み合っていますが、共通するテーマはやっぱりそこですよね。
特にイェノ。どんなに厳しい状況でも、自分の愛するもの──ソフィーへの愛だったり、音楽への愛だったり──に向かってまっすぐに突き進んでいく。そんなふうに真っ直ぐ愛を貫けるのは、お母さんやウルフ(イェノの養父)が彼に沢山の愛情を注いだからだと思います。
北口:ブラウ男爵(デイヴィッドの父)やウルフが向ける子供たちへの家族愛とか…デイヴィッドからの唯一無二の親友に対する友情だったりとか…イェノを取り巻く人々は皆、深い愛を持って物語を生きていて。
岩元:デイヴィッドにしても、イェノを人間として愛していたから、気まずくなったりはしても最後に駆けつけてくれたり。すごく辛いシチュエーションの中からも波のように愛が溢れてくる、素敵な作品だと思いました。
犬丸:第2次世界大戦間近の重苦しい時代の中に、切ない恋愛と友情がぎゅっと詰まった人生を駆け抜ける主人公たちがいます。この作品を通して人の想いの強さや、愛や情熱を感じていただけると思います。
北口:理不尽で悲しい時代だからこそ、何よりも愛が必要で大切だっていうことを、劇中の素晴らしい音楽が訴えかけてくれていると感じます。
── イェノは純粋であるがゆえ、子供のような行動を取りがちです。演者しての自分との共通点はありましたか?
犬丸:かなり共通する部分があるなと思ってはいました。自分は結構感情的になってしまったり、気持ちが表情に出やすかったり…そういう部分があるので、イェノに共感する場面は結構あって、そういった意味では、役作りの解像度は上がったのかなと思います。
例えば寄宿舎で舎監が「消灯時間だ、寝なさい」って言ってるのに思いきり弾き始めて。「静かに!」って叱られても反発して弾き続けちゃうところとか、「うん、そうなるよね」と、ストンと腹に落ちました。
── そのイェノと、ソフィー、デイヴィッドが3人揃って登場するシーンは限られていて、物語はイェノを中心に、二組の人間ドラマの同時進行で描かれていきます。
ソフィーから見たイェノとデイヴィッド、デイヴィッドから見たイェノとソフィーをどのように感じられたか、聞かせてください。
岩元:ソフィーはデイヴィッドと関わることはなくて、二人の関係はきっと知らないと思いますが、大事な演奏会に彼が遅れてやってきた時、イェノが本当に嬉しそうな表情を見せて、ソフィーはすごく安心したように微笑むんですね。だからその瞬間だけで、二人の固い友情を感じ取ったんだと思います。
北口:デイヴィッドから見たイェノとソフィーは、「自分自身以上に大切で、失いたくない存在」なんだと感じました。
音楽院生活の中でイェノから「憧れの女性」の話を聞いて、それがソフィーなんだと、3人が巡り逢った時にデイヴィッドはあっという間に気づきます。
そんなところからも、デイヴィッドはイェノのことをちゃんとわかってるなって思いました。
── それが未来までつながっていきますね。
北口:はい。何かこう、二人を本当の意味で忘れないために…自身の人生を犠牲にしてでも守りたい存在だったんだと、僕は解釈しました。




── それぞれのキャラクターの近くにいる人物にも、強烈なインパクトを感じます。
例えば、イェノにとっての母親やウルフ。ソフィーにとってのカール。デイヴィッドにとってのブラウ男爵について、それぞれどのような印象を持ちましたか?
犬丸:イェノのお母さんは、父親に会ったことがない彼の、唯一の肉親です。彼女のおかげで、愛情深くて真っ直ぐなイェノが育ったのかなと。だからこそ、物語が展開する中での不意な別れに対する動揺や悲しみが、本当に激しく伝わってきます。
── 幼いイェノが弾くエチュードが流れる、印象的なシーンでしたね。
犬丸:養父のウルフは…イェノにとって良き理解者以上の存在だと思います。
連れ子のイェノにヴァイオリンを習わせてくれたのも彼だし、イェノが初めてソフィーと会った時、浮かれまくって「運命の人に会った、キスしたら帰る!」って突拍子もないことを言った時も、抑えつけずに送りだしてくれた。良き理解者として寄り添ったり励ましたりしてくれた、その積み重ねがあって、のちのちイェノに「僕の父だ」って言わせたんだなと思います。
── ソフィーにとってのカールは?
岩元:カールは年下のソフィーのことを、ピアノの才能も含めてひたむきに愛してくれる夫です。時々語気が強くなることもありますが、それも全部ソフィーを守りたいから。
「ピアノの才能は金儲けの道具」といった打算的な思いではなくて、純粋に「素晴らしいから広めたい」という気持ちから、ソフィーに演奏活動をさせようとしているように感じます。
ただソフィーは、彼にすごく感謝してるし、好きになれたら幸せだろうとも思いつつ、でもどうしても心からの恋愛感情が湧かない。そこは何だかすごく歯痒いし、ソフィーはその若さゆえに、感謝をうまく表現できず冷たく当たってしまったりするので、演じながら、カールに本当に申し訳ないなって…何だか一番報われなくて可哀想な人かもしれません。
作品の終盤にさしかかる大事なシーンでも、本当に「何とかしてあげられたらいいのに」って思ってしまいます。でもソフィーは無言で…だから息だけの芝居になりましたが、ちょっとでも「ごめんなさい」っていう気持ちを乗せられたらいいなと思いながら演じました。
── では、デイヴィッドにとってのブラウ男爵は。
北口:僕がデイヴィッドと同じ未成年の頃は、父が最も怖い存在かつ最も尊敬すべき大人であって、生き方や考え方の手本というか、背中を見る対象でした。
デイヴィッドは男爵家の跡取りという環境で、でも僕と同じように父の背中を見上げつつ、息子として愛されたい、認められたいと純粋に願いながら成長したのだと思います。
ただその家柄あっての精神的なプレッシャーの分、男爵の過ちを許せずに、彼のこともイェノのことも拒絶してしまう。
その男爵が物語の終盤で、自分のしたことを償って過去に向き合おうとする。そんな彼の姿を見て、やっぱりデイヴィッドの父なんだって、ジワッときました。
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逆奏のカノン (2000年 イタリア) 作品データ
■ 監督 リッキー・トニャッツィ
■ 原作 パオロ・マウレンシグ「狂った旋律」
■ 音楽 エンニオ・モリコーネ
■ 出演
イェノ:ハンス・マシソン
ソフィー:メラニー・ティエリー
デイヴィッド:リー・ウィリアムズ
■ ストーリー
1970 年、プラハのオークション会場で古いヴァイオリンを競り落とした老紳士は、一人の女に引き留められる。
「この楽器はある人物が実在した証し」そう切り出した彼女は 2 年前に出会った不思議な男と、遠い記憶を呼び覚ます旋律のことを語り始める。それは第二次世界大戦が近づくヨーロッパでの、ヴァイオリンと音楽を愛する純朴な青年イェノと、美しいユダヤ人の女性ピアニスト、ソフィーとの悲恋の物語だった。
そして老紳士が入手したヴァイオリンをめぐり、家族の因縁、音楽学校での生徒の絆、ナチスドイツの台頭などが複雑に絡み合い、戦後の世界へと続いていく。
イタリア映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネの奏でる旋律が美しく激しく心を揺さぶる。
■ 日本語吹替版キャスト
- イェノ 犬丸 義貴
- ソフィー 岩元 絵美
- デイヴィッド 北口 聖
- コンスタンツァ 桜井 春香
- バイオリン弾き 小出 明
- ブラウ男爵, 老紳士 近衛 頼忠
- ウルフ 神﨑 龍太
- イェノの母 紅林 伽奈
- ブラウ夫人 さきとう 薫
- カール 吉岡 翔悟
- ヒシュバウム 森川 直樹
- ヴァイゲル, 競売人 太田 光駿
- 幼いイェノ 幸野 央枝
- レヴィー家秘書 やまち あき
- エガーマン 松本 章太郎
- ジミー, ラビ 吉村 伊織
- フランツ 弦谷 直
- マレク 唐澤 孝侑
- サラ 林 あゆり
- ブラウ家メイド 乙羽 美輝
- プール係員 青柳 佑
- レヴィー家運転手 郡司 翔偉
- 農場の少年 藤坂 早映
- 花売り 赤堀 実華琉
- 保養地の少年 岡 ありさ
■ 予告編
■ 日本語吹替版 好評配信中!
(C) 2000 Cecchi Gori Group Fin.Ma.Vi.
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